プロとしての提案力

相手が求めていることはなにか。

それを察し、相手に対して提案していく力は、日々の生活においても重要だ。

毎日の仕事で実感し、かつ後輩指導の際にも意識していることだが、ふとした瞬間に再認識する。

今日、歯医者に行った。ここ何週間か、顎が痛むのだ。美味しいものを美味しくいただけない。つらい日々が続いていた。

調べると、顎関節症というものらしい。

治療法としては、大掛かりになると矯正しかなく、あとは日々の習慣から治していくしかないらしい。

自分としても過去にも顎が痛くなったこともあり、放っておくしかないのかと思っていた。ただ、とりあえず診てもらい、話を聞こうと思い、歯医者に行ったのだ。

先生は若い女性だった。

症状についての私の話を、メモを取りながら聞いてくれ、口の写真やレントゲン写真をとりながら、やはり顎関節症だとの結論に至った。

さて、問題はそこからだ。では、私はどうすれば良いのか。

ある程度の情報は、私もネットで調べているため、抜本的な解決方法がないのは分かっている。とはいえ、何か日々の生活の習慣を変えることで、改善を計れないのか。何か、先生の口からアドバイスがほしいというのが、私の本音だ。

ただ、先生も何も言ってはくれない。謎の沈黙があった。

おそらく、先生としても、私が何を望んでいるのかを慮っていたのだろうことは想像できる。そして、これが男女の脳の違いなのかとも想像できる。

(つまり、男性脳は課題の解決方法を早急に導き出したがる傾向にあるということだ。)

私としては、解決方法が何か、知りたかったのだ。

もし矯正するとして、費用、期間はどれくらいかかるのか。

矯正しなかったとしたら、どうすればよいのか。なすすべなく、ただ放っておくしかできないのか。解決方法としての選択肢を示して欲しかった。

しばらくの沈黙の後、ナイトガードをつくる方法があります、と先生が言ってくれた。そう。そういう提案を待っていたのだ。無論、私もネットで調べているので、そういう治療法があるのは知っている。ただ、先生の口から進めてもらいたかったのだ。納得感が欲しかったのだ。

結果、ナイトガードを作ってもらうことにし、先生にお礼を言って歯医者を後にしたのだが、この30分程度のやりとりから、とっても学びを得たと思う。

やはり、自信を持って、相手に提案していくことの大切さだ。

相手の話を聞きながら、相手を受容することはとても大切だ。

ただ、その上で、自分としては、「こう思う。これがオススメの解決方法です」と言い切れるか、どうか。特に、専門分野について、相手が意見やアドバイスを求めてきたとしたら、しっかり提案していくことだ。

相手も、下準備をしてきていると感じたら、なおさら、背中を押してあげられるような提案をしてあげてほしい。

相談を持ちかけてくる相手も、ある程度の算段があって、ほぼ結論に達しているかもしれない。その見極めは大切だ。

日々、情報が溢れる時代になっている。

なんでも調べれば、ある程度の解決方法が出てくる。

そうなると、専門家は必要なくなってしまう。専門家に求められているのは、ネットに出てこないような情報を、直接、相手に語りかけることであり、ネットに出ている情報もまさに、正しいのだ、と納得感を持たせることになってくるのかと思う。

つまり、情報の中身ではなく、情報の出どころが大切になってくるのではないか。そんなことを歯医者からの帰り道で徒然と考えていた。